天候や事故などで突然中止になる花火大会。そんなとき、すでに準備された大量の花火玉はどうなるのでしょうか?
「余った花火って来年も使えるの?」「雨で濡れたらもうダメ?」「再利用ってできるの?」と気になる人も多いはず。
この記事では、実際の中止事例や花火業者の証言、法律上の決まりをもとに、中止時に残った花火玉の行方と再利用の現実を徹底解説します。
もったいないけど破棄される理由や、例外的に“復活”する場合のエピソードも紹介します。
花火大会が中止になったら…残った花火玉はどうなるの?

花火大会が突然中止になったとき、「準備された大量の花火玉ってどうするの?」という疑問を持つ人は多いでしょう。
実は中止の理由やタイミングによって、その後の処理方法は大きく変わります。
中止の理由で花火玉の扱いが変わる
中止の理由が「数日前に決まった」場合と「当日急に中止」になった場合では、残された花火の扱いに違いがあります。
中止のタイミング | 花火玉の状態 | 処理方法 |
---|---|---|
数日前に中止決定 | 保管状態・未設置 | 火薬庫に戻して翌年以降に再利用可能 |
当日中止(設置前) | 保管状態・未設置 | 基本的に再利用される |
当日中止(設置済) | 湿気リスクあり | 原則、再利用不可・廃棄されることが多い |
→ 安全性が確保できるかどうかが再利用の可否を左右します。
当日設置済みなら再利用は難しい?
一度、筒にセットした花火玉は「導火線をほぐす処理」などがされており、湿気を吸いやすい状態になります。
そのため、雨や湿気の影響で安全に使えなくなるリスクが高まり、設置後は基本的に再利用されないのが通例です。
翌年や別イベントでの“再登板”はある?
中止になっても未使用で保管できた場合は、翌年の同じ大会で使われることがあります。
以前、コロナ過で軒並み花火大会が中止になった分の花火の行方や保管を尋ねた2020年の記事では、下記の様に公益社団法人日本花火協会の関係者が答えています。
Q.中止になった大会分の花火は、来年まで保管するのでしょうか。
「基本的には、全部在庫することになります。花火は湿気などに注意して適切に保管すれば、長期的に使用できます。1年後の大会に備えて保管すること自体は問題ありませんが、火薬類である以上、法律に基づいて安全を保って管理しないといけないので、大変ではあります。火薬庫の維持費、管理費がかかり、経費もばかにならないですね」
引用元:オトナンサー 2020.04
また、別の地域イベントや、特例として企業主催のイベント(例:万博)で再び打ち上げられるケースも。
ただしこれはレアなパターンで、再利用されず廃棄されることのほうが多いのが現実です。
花火玉に使用期限はあるの?どのくらい保管できる?

「花火玉って賞味期限みたいなものはあるの?」という疑問もよく聞かれます。
ここでは花火玉の“寿命”と保管条件について詳しく見ていきましょう。
実は使用期限はないが「保管条件」がカギ
一般的に「花火って使わないと劣化しそう」
「期限切れってあるの?」
と思う方も多いかもしれません。
実は、花火には“使用期限”がないといわれています。
そのことは、家庭用の花火パッケージにもはっきりと表れていて、理由もとてもシンプルです。
「おもちゃ花火のパッケージには『使用期限』についての記載は一切ありません。それは単純な理由で、『花火には使用期限がない』からです。花火で使われている火薬は経年劣化を起こしにくく、製造から10年経っても品質を保つことができます。
引用元:ウェザーニュース
花火玉には食品のような明確な使用期限はありません。
火薬自体は10年以上保管可能ですが、適切な保存環境がないと性能が落ちてしまいます。

「製造から10年」はどこから?
実は、製造物責任法(PL法)という法律で、メーカーの責任期間は製造から10年間と決められています。
つまり、万が一の事故が起きたときに、メーカーが責任を負うのは10年以内ということ。
これが「花火の使用期限=10年」と言われる理由のひとつなんです。
ただし火薬類取締法に基づき火薬庫で安全に管理する必要があり、花火大会で打ち上げる大玉など一般の花火とは使用法が異なる物になればなるほど維持管理には相応の手間と費用がかかる点が課題です。
↓
長期の中止で経営的打撃は大きく、中には廃業の危機に陥る可能性もあり、実際に10年も保管はしない。
実際、2014年に台風で中止となった東京湾大華火大会に関するテレビ番組でも、専門家が「打ち上げ準備前なら2年保管できるが、導火線をいじってしまった玉はもうダメ」と解説しています。
花火玉の保管ポイント
- 湿度の少ない専用火薬庫で管理
- 高温多湿や直射日光を避ける
- 導火線部分は特に劣化しやすい
→ 専門業者が管理すれば、翌年の大会にも問題なく使えることが多いです。
火薬が劣化するリスクと湿気対策
花火玉の材料には紙・木粉・火薬など湿気に弱いものが多く、湿度が高い夏場は特に注意が必要です。
湿気を吸うと、玉の中で火が回らず不発や暴発のリスクが高まります。
導火線の処理が寿命を左右する?
実は、打ち上げ直前に施す「導火線ほぐし(点火しやすくする加工)」によって、花火玉の寿命は一気に縮まります。
この処理をしてしまうと、数日で使えなくなることもあるため、設置後の花火は翌年に持ち越せないことが多いのです。
やっぱり破棄されることが多い?再利用が難しい理由


「なんでそんなにもったいないことに?」と感じる方へ。
ここでは再利用が現実的に難しい理由を、わかりやすく解説します。
湿気・安全性が最大のネック
再利用を阻む最大の理由は「安全性の確保」です。
湿った花火は正常に開花せず、観客の頭上に落ちてくる可能性すらあるため、少しでも湿気を帯びた花火は廃棄されます。
2024年8月、東京「足立の花火」は開始20分前にゲリラ豪雨に見舞われ中止となりました。その時の花火は…?
会場に設置済みだった約1万3千発の花火玉のほとんどが雨に濡れてしまったとされ、主催者は有料席チケット代約3,000万円を全額払い戻す一方、花火業者には準備経費・打ち上げ費用ほぼ全額(予算2億7千万円相当)を支払うことになりました
天候不良や災害により大会当日に急きょ中止となったケースでは、花火玉の多くが直ちに使用不能となり処分を余儀なくされる事例が報告されています。
設置後の花火玉は再利用しないのが原則
一度筒にセットした玉は、導火線や内部の火薬が空気や湿気にさらされているため、回収しても再利用しない方針が多いです。
安全に見えても、乾燥後の性能が落ちることがあるからです。
経済的理由や契約上の事情も背景に
実は「使えなくなった花火玉」を翌年の大会に回すと、追加の契約や管理費が発生し、コスト的にも非効率。
一方、すでに支払いを受けた分については、廃棄してしまっても業者の損失にはならないという事情もあります。
処分される場合の方法は?花火玉の廃棄ルール
ここからは、再利用できなくなった花火玉がどうやって処分されるのかを見ていきましょう。
実は家庭の花火とは違い、専門的かつ法律に則った処理が必要です。


解体より安全な「水漬け処理」が一般的
危険を伴う火薬の解体作業は避けられがち。
代わりに、花火玉ごと水に漬けて不活性化させる処分方法が広く使われています。
水漬け処理の流れ:
- 花火玉を大型水槽に数日〜1週間漬ける
- 火薬が湿って反応しなくなる
- 破裂の心配がなくなったところで回収・破棄
廃棄にも費用と専門技術が必要
花火玉は火薬類として産業廃棄物扱いになります。
専門業者が安全に処分する必要があり、その分の費用は主催者または花火業者が負担することに。
→ 保管や処分のコストも、花火大会の中止が「痛い」理由のひとつです。
火薬類取締法による厳格な管理とは
花火玉は「火薬類取締法」により、製造から廃棄まで厳密に管理されています。
管理項目 | 法的対応 |
---|---|
製造 | 都道府県の許可が必要 |
保管 | 火薬庫の設置・届出が義務 |
廃棄 | 許可申請・報告が必要 |
→ 個人や一般団体が勝手に処分することはできません。
実際に再利用されたケースはある?過去の事例を紹介
「中止になった花火玉って、やっぱり全部廃棄なの?」
そう思う方もいるかもしれませんが、ごくまれに“復活”を果たすケースも存在します。
ここでは、実際に再利用された3つのパターンをご紹介します。
①延期開催で復活した例(コロナ禍/天候トラブル)
花火玉が再び空を彩るチャンスがあるのは、予定変更による“延期開催”ができた場合です。
実例まとめ
地域・大会 | 中止理由 | 対応内容 |
---|---|---|
全国多数(2020〜2021年) | 新型コロナによる中止 | 翌年に保管花火を再利用して開催 |
宮崎県小林市すき納涼花火大会(2023年) | 南海トラフ地震注意情報 | 翌月に“リベンジ開催”し、花火を打ち上げ |
これらは花火玉に被害がなく、なおかつ再調整が可能だったからこそ実現した例です。
→ 事前に予備日や延期の仕組みがある大会では、再利用のハードルが下がります。
②別イベントで“譲渡&再使用”された特例も
予備日がない大会では、後日に開催される別イベントで再利用されたケースもあります。
実例:神奈川県 清川村の「宮ヶ瀬ふるさとまつり」
- 台風の影響で3日間のうち1日が中止に
- 余った花火は業者が一時保管
- 後日、村内の別イベントで打ち上げられた
ただしこのような“横スライド”は、保管状態が良好で、イベント主催者間で再契約がスムーズにできた場合に限られます。
③注目!大阪・関西万博の「希望の花火」プロジェクトとは?
🎆【8月の打ち上げは、#未来につなぐ希望の花火 】
— 大阪・関西万博 🎆 JAPAN FIREWORKS EXPO 公式 | 日本全国の花火大会が集結! (@JFP_HANABI) August 1, 2025
次回のJAPAN FIREWORKS EXPO(JFE)は、
今年中止となった全国の花火大会で打ち上げ予定だった花火玉を 大阪・関西万博の夜空へ打ち上げます!
『 #晴れ風ACTION 特別共催 未来につなぐ希望の花火』
📅 開催日:8月23日(土)… pic.twitter.com/7M1AKowpu7
2025年8月23日(金)、大阪・関西万博会場で、全国の中止花火大会から集められた花火玉を打ち上げる特別イベントが開催予定です。
📌 イベント概要
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 未来につなぐ希望の花火(晴れ風ACTION 花火プロジェクト) |
日時 | 2025年8月23日(金)夜(予定) |
会場 | 大阪・関西万博会場内 |
参加 | 全国7大会(兵庫・福島など)から中止になった花火玉を提供 |
主催 | キリンビール × 花火業者の協力による社会貢献施策 |
このイベントのテーマは、
「中止になっても無駄じゃない。“花火の想い”をつなぐ」
というもの。
天候や資金難などで打ち上げられなかった花火を、別の“特別な舞台”で一夜限り復活させるという、極めて異例で感動的な取り組みです。
🎇 提供された大会例(一部)
- 兵庫県「猪名川花火大会」
- 福島県「双葉町復興祈願花火」
- その他、地域の伝統大会など合計7か所
このような再活用が可能になるのは、企業スポンサーや業界団体の協力があってこそ。
今後も「打ち上げられなかった花火に再び光を当てる」仕組みが広がっていくかもしれません。
兵庫県「猪名川花火大会」など関西地域の主要な花火大会は秋の時期に変更になったり、中止になっている傾向があります。実は理由が…
共通の背景:「警備員不足」と「人件費の高騰」
- 2025年は大阪・関西万博が開催中(4月~10月)
- 万博会場や周辺施設の警備に多数の人員が動員されており、地域イベントに回す余裕がない
- 特に警備会社の人材確保が難しくなり、1人あたりの単価も大幅上昇
- 花火大会の警備コストが例年の2倍〜3倍に跳ね上がったとされ、自治体・実行委員会の予算では対応困難に
→ このプロジェクトは中止花火の再利用に光明をもたらす“未来型モデルケース”とも言えるでしょう。
まとめ:再利用はできるが、条件はかなり限定的
再利用のケース | 条件 | 実現の難易度 |
---|---|---|
延期開催 | 被害なし+日程再調整 | △ |
別イベントで再打ち上げ | 保管状態良好+主催者調整 | △〜× |
万博での合同復活 | 多数の協力・特別プロジェクト | ◎だが極めてレア |
🎆 こうしたケースがあるとはいえ、当日中止・湿気の影響あり・延期不可の大会では再利用は困難です。
だからこそ、「希望の花火プロジェクト」のような取り組みが注目されているのです。
まとめ:花火玉はどうなる?再利用より廃棄が現実
最後にもう一度、読者が知りたかったポイントを振り返ります。
疑問 | 回答 |
---|---|
中止になったら花火はどうなる? | 保管状態なら再利用、設置済みや濡れた場合は廃棄 |
使用期限はある? | 明確な期限はないが、湿気や導火線処理で寿命が左右される |
再利用されることは多い? | 基本的には少なく、廃棄が主流 |
処分方法は? | 水漬け処理で安全に廃棄、法規制に基づいて処理される |
実際に再利用された例は? | コロナ禍後の復活、万博での再使用などがあるが珍しい |
中止の瞬間に消える“花火師の想い”
「空に咲くことなく、解体される花火ほど悲しいものはない」と語る花火師の言葉が印象的です。
もったいないという気持ちと同時に、観客の安全を第一に考えた判断がそこにあります。
観客として知っておきたい裏側と未来への願い
中止の背景には、多くの人の安全への責任と悔しさが詰まっています。
いつか再び、準備された花火が安全に打ち上げられることを願って、私たちも理解ある観客でいたいですね。